音楽クイズ NO.316 怪盗ギロ 失踪者からのメッセージ(3)


 私も南の島に暮らす画家の絵に埋められた符号(音楽クイズNO.206参照)に出会えなかったら、小さい反射光の列に気づくことはなかっただろう。ある展覧会で偶然にBと会ったとき、この話をしたことがあった。Bは私に気づかせるためにそれを応用したのではないだろうか。
反射光が意味していると思われる「ソ・ド・bシ」の三つの音を、「Morgen」の題名のように、ドイツ語の音名で表すと「G・C・B」となる。これで検索にかけると、事務用品、IT、ゲーム関連、グローバル人材、ひいては勲章まで、とりとめもない種類の語句が出てくる。・・・ そう、これは彼が仕掛けたトラップ(わな)であった。ひっそりと運営しているホームページとはいえ、他の誰かが気づくかもしれない。ちょっとした予防線を張ったということか。
 あれこれ思考をめぐらせているうちに、飛行機は高知空港(高知龍馬空港)に到着した。まずは「はりまや橋」に行ってみることにした。橋の少し高くなったあたりに立ち、絵の構図の方向を眺めてみる。謎解きは実感をともなってきた。
この時、私の次の行き先はすでに決まっていた。Bの絵には、大通りをすれ違う路面電車が描かれていたが、反射光が描かれていた方の路面電車(ほとんどが南に向かう)に乗りこんだ。終点のひとつ前の桟橋車庫前からバスに乗り換え、「雪蹊寺」というお寺に向かう。
 なぜこのお寺に着目したか、ここで最初の種明かし。三つの音の三番目「bシ」は日本の音名では「変ロ」となる。そう、「遍路」である。遍路と言えば四国八十八ヶ所、徒歩で全行程1400kmに及ぶ巡礼の旅である。さすがに車でまわったとしてもえらい時間がかかる。Bは道しるべを示してくれていた。まずは「はりまや橋」のある高知市。四国八十八ヶ所で高知市内にあるお寺は4カ所(よさこい節に歌われる坊さん純信の修行していた「竹林寺」第31番もある)、この中で反射光のある路面電車と同じ方向にあるのが「雪蹊寺」(第33番)というわけである。長浜という停留所で下車し、「雪蹊寺」についた時はお昼をとうにまわっていたため、近くの食堂で腹ごしらえをすることにした。食事をしながら思った。何の因果かBの絵に引かれて遠くのお寺さんを訪ねて来たが、少しでも悪行(泥棒稼業)のみそぎをしろという天のおぼしめしか・・・と。しかし、「変ロ=遍路」とはダジャレもいいところだ。もしかしたら、これも人を喰ったトラップかもしれない。ともあれ、少し落ち着いたところで、あの旋律(音列)を求めて歩き始めた。
 「雪蹊寺」をはじめ、周辺を2時間以上も歩き回ったが、あの旋律のヒントはつかめなかった。疲れた脳と体を鳥のさえずりが癒してくれた。その日はすぐ近くの旅館に一泊し、もう一度、明日にかけてみることにした。そう、私は何やら確信めいたものに動かされていた。


 問題3  5つの音の旋律の正体は何?ギロは何を予感している?