音楽クイズ NO.177 箏お師匠さん殺人事件


 観静流箏総本家では、家元の右腕となる幹部職の欠員にともない、その地位をめぐる攻防が繰り広げられていた。この地位を得た者は、総本家主催の演奏会をしきったり、全国の教室の指導にあたったり、大きな権力を握ることになる。

 そんな折、最も有力と思われていた佐久間やよい氏が、総本家のはなれの練習場で、後頭部を花瓶でなぐられ殺害された。犯人は難曲の練習に集中していた佐久間氏の後ろから忍び寄り、犯行におよんだもののようだ。遺体はお茶を差し入れたお手伝いさんが発見した。警察は、状況から内部の人間による犯行とし、その時総本家にいた者を集め、聞き取りをはじめた。アリバイのない者は5人いたが、どれも継承争いに関与し、ちょっとのことではしっぽを出しそうにない強者ばかりであった。

 

 東野和之(38歳)・・・甘いほめ言葉とポーズで人心を得ようと努めていた。

              佐久間氏からは、あまり相手にされていなかった。

 西井和代(37歳)・・・陰でライバルの悪口を広め、自分の有利を導こうとしていた。

              表面上、佐久間氏とは仲はよかったようだ。

 南 くるよ(40歳)・・・寡黙だが箏の実力と聡明さには一目置かれていた。

              他にはあまり関わろうとせず、とっつきにくい性格。

 喜多野 良(40歳)・・・温厚な性格で人から好かれ、箏の実力もある。

              佐久間氏の「華」のある姿にはかなわず、うらやんでいた。

 春木 琴江(35歳)・・・天真爛漫な性格で、箏の実力とあいまって、家元からは

              娘のようにかわいがられていた。歯に衣着せぬ物言いで

              佐久間氏にもどきっとするような批判をすることもあった。

 

 捜査は行き詰っていたが、思わぬところから光が見えてきた。箏のお師匠さんを母にもつ若手刑事が、佐久間氏のひいていた箏の調弦がかなり奇抜なものであることを見抜いたのである。事件当初はみんなうろたえて気づかなかったが、たしかに調弦をする琴柱の位置がおかしい。そう、佐久間氏は消え行く意識の中、箏奏者らしいダイイング・メッセージを残していた。

 観静流は箏に対して斜めに構えて演奏する(写真赤丸の位置)。また、殴られた角度もやや斜めだったため正面ではなく、かなり左横に倒れたのである。琴柱は多くが倒れずに残っていた。弦は13本、奏者(赤丸)から見て一番手前の弦の琴柱と一番奥(13番目)の弦の琴柱が倒れていた。不自然なのは、手前2番目から9番目までと、11番目の弦の琴柱は一般的な調弦の位置にあったが、10番目と12番目の琴柱はおかしな位置にあり、しかも2番目の琴柱とほぼ同じ位置にあったことだ。さらに10番目と12番目の弦と琴柱から少量の佐久間氏の血痕が認められ、犯行後、意図的に動かしたことが推察された。

 さて、諸君。佐久間氏のダイイング・メッセージが示す犯人は誰?



前置きはしつこかったけど、タネは単純!がんばってね。