わかれ橋の夏
 p.giro
 

登場人物     まい  秀ちゃん  婦人  ナレーター 

 

♪夏の雲に short version (2部合唱+バンド)  

 

青い風にふかれて 小川の小道をゆけば

古い 小さな橋で こもれびがおどっていた

おーい 夏の雲(おーい 雲よ)

おーい 風をつれて(おーい 風よ)

海の はるか かなたへ わたしをつれてって

なつかしいきみの声が わたしを呼んでいる

 

ナレ  わたしは、まい。秀ちゃんは、となりの家の子。

    誰とも口をきけない、ひっこみがちな私をいつもかばってくれる、大切な友達。

    ある夏の日の午後。せみしぐれの中、秀ちゃんと川の小道を散歩した。

    そして、ある小さな橋のところまでやってきた。

秀   「まいちゃん、古そうな橋だね。つたがからんでる。わたってみようか?」

まい  「いや・・・こわそうだもん」

秀   「だいじょうぶだよ・・・ほら、ゆれたりしないよ・・・

     下に魚がいっぱい見えるし・・・」

まい  「だって、そこにお墓みたいな石があるの。」

秀   「え、お墓?どれどれ・・・ははあ!お墓じゃないよ、まいちゃん。

     わかれ橋ってほってあるんだよ。・・・ほら!」

まい  「え・・・ほんとだ、わかれ橋っていうんだ。・・・

     あれ・・・下にまだ何か書いてある。」

秀   「ほんとだ。えーと、この橋をわたるもの、わかれ行き、そして、ふたたび

     おとずれる。・・・

     うーん、この橋をわたって、まためぐりあうのかな?」

まい  「映画みたい。・・・もしかしたら、1回わたると何回もわかれるのかも」

秀   「そんな・・・途中までわたっちゃったよ。」 

♪「夕立」 効果音 (雨、雷、雫のしたたり、かえる など) 

まい  「あ、雨・・・」

秀   「たいへんだ。夕立が来たぞ。早く雨宿りしよう。」

まい  「うん」

まい  「あ!にじ」

秀   「にじだ。きれいだなあ。そうだ。林のむこうの丘にのぼってみようよ。

     きっと、よく見えるよ。」

まい  「うん。いこう。」 

♪虹を追いかけて (リコーダー3部+木琴+ティンパニ+ピアノ)  

ナレ  その日が秀ちゃんと遊んだ最後の日になった。

    しばらくして、秀ちゃんのお父さんの外国転勤がきまり、秀ちゃんも

    行ってしまった。・・・そして、さびしく、つらい夏の日が過ぎていった。  


♪「夏のおわりの」 (歌ソロ+ピアノ)  

 

夏の終わりの ひまわり なぜか さびしそう

あんなに 日ざし 追いかけたのに 今は こうべたれて

青い空を 忘れたの 光る雲も 忘れたの

夢をなくした ひまわり 庭のかたすみに

  

ナレ  夏も終わりのある日。わたしは一人であの橋のところへ来ていた。

    ぼんやりしていたら、白いワンピースのドレスを着て、日がさをさした

    ご婦人が声をかけてきた。

 

婦人  「こんにちは」

まい  「こ・ん・にちは」

婦人  「お一人でお散歩かしら?ここはお気に入り?」

まい  「い・いえ。・・・なんとなく」

婦人  「そう・・・わたしは、ときどきここにくるの。」

まい  「え、さびしくないですか?わかればし・・・」

婦人  「まあ、ご存知なのね。わかれ橋を。・・・

     あなたも大切な方とお・わ・か・れ・したの?・・・

     そう、・・・わかれはとってもつらいわね。・・・

     あなたは橋の向こうにわたったことはあって?」

まい  「え?・・・いいえ」

婦人  「一緒に行ってみましょうか。・・・大丈夫!勇気を出して・・・

     この石を見てごらんなさい。」

まい  「・・・え、あゆみ橋。」

婦人  「そう。あゆみ橋。向こうからは、わかれ橋。こちらからは、あゆみ橋。

     ・・・この橋で悲しいわかれをした人は、再びここを訪れるの。

     わかれをするために。」

まい  「え?どう言うことですか?」

婦人  「いつまでも沈んでいる、よわい自分の心にわかれをするの。

     そして、あゆみだす・・・。

     向こうに見える丘は虹の丘。虹がとってもきれいに見えるの。

     心の中がいつも雨降りでは虹は見えないわ。

     だけど、あゆみ橋に立った人には見えるの。思い出という虹がね。・・・

     あなたにも見えるかしら。」

まい  「・・・はい」

婦人  「そう、元気をだしてね。・・・わたしは、そろそろ失礼しなくちゃ。

     それでは、ごきげんよう。」

まい  「さようなら」

 

 

ナレ  なんとなく心が明るくなって家に帰ったわたしに、秀ちゃんからの小包が

    とどいていた。

    小包の中のメールには、なれない土地でたいへんだけど、負けずに頑張って

    いることが書いてあり、虹がかかった広い丘の上で、元気そうに手を振る、

    秀ちゃんの写真がそえられていた。

    そして、わたしへのプレゼント!

    きれいな包みを開けると・・・

    それは、白いドレスを着て、日がさを持った貴婦人の人形だった。

    ・・・ありがとう秀ちゃん・・・わたしはもう、大丈夫。

 

♪「夏の雲に」 long version (2部合唱+バンド)  


 

夏の午後の雨上がり にじを追いかけてみた

緑の丘のてっぺんに かかる夢のかけ橋

※ おーい 夏の雲(おーい 雲よ)

  おーい 風をつれて(おーい 風よ)

  海の はるか かなたへ わたしをつれてって

  なつかしいきみの声が わたしを呼んでいる ※